斜視・弱視外来

斜視とは

担当医からのメッセージ

斜視とは、両目の視線がずれている状態のことをいいます。両目の視線がずれていると、ものを立体的に見ることができなくなったり、2つに見えたりします。子どもの斜視と大人の斜視では、原因や治療の目的が異なります。子どもの斜視は、視力や立体的に見る力を育てることが治療の目的になります。大人の斜視では、日常生活で、2つに見えないようにすることや、目の疲れを減らすことを治療の目的とします。
斜視の治療は、見た目の眼の向きを改善するだけではなく、目の機能や、目の疲れ、頭痛、肩こりにも影響します。

子どもの斜視

子どもの斜視の治療目的

  1. 視力が正常に育つように促す。
    ずれている眼は、使っていないため視力の発達が遅れます。視線のずれを改善することで、視力の発達を促します。視力の発達は生後1ヵ月から約8歳で終わってしまうため、その期間に視線を揃えることが重要です。
  2. ものを立体的に見る力を育てる。
    両目でものを立体的に見る力を『立体視』といいます。近くの立体視は1歳半から3歳ごろにもっとも大きく育ち、遠くの立体視は10歳ごろに育ちが終わってしまいます。

斜視の種類

内斜視:片目が内に寄っている

内斜視
内斜視
  1. 乳児内斜視:生まれたときから目が内に寄っている場合、早期の治療が必要です。立体視を育てるためには、生後半年から3歳の時期に視線をそろえておくことが重要です。
  2. 調節性内斜視:2-3歳ごろに起こってくる内斜視は、遠視が原因で、眼鏡を掛けると良くなります。そのまま放置すると、眼鏡を掛けても治らない恒常性の内斜視になりますので、すぐに治療が必要です。
  3. 急性後天性内斜視:スマホやパソコンなど、近くを見る作業を長時間続けることで起こる内斜視です。生活習慣を改善すると治りますが、半年以上続くと治りにくくなります。また、脳の病気の鑑別のため、頭部MRI、CTの検査が必要です。放置せず、早めに受診しましょう。

外斜視:片目が外に向いている

外斜視
外斜視
  1. 間欠性外斜視:目がずれるときと、まっすぐなときがあるタイプの外斜視です。眠い時や疲れたときに片方の目が外向きにずれます。視力や立体視は育つことが多いですが、2つに見えたり、目が疲れたり、頭痛の原因になったりします。
  2. 恒常性外斜視:片方の目がずれたままの外斜視です。ずれたままの目は視力が育たず、弱視になります。立体視も育ちません。早めに治療が必要です。

上斜視:片目が上を向いている

上斜視
上斜視
  1. 先天性上斜筋麻痺、下斜筋過動
    目を上下に動かす筋肉のバランスが悪いために片目が上方にずれるタイプの斜視です。
    ものを見るとき、いつも同じ方向に首を傾けていることが特徴です。長く首を傾けていると、背中が曲がったり、顔の形が変わったりすることがあります。
いつも首をかたむけている
いつも首をかたむけている

大人の斜視

大人の斜視の治療目的

大人の斜視は、2つに見えたり、目が疲れたり、頭痛が生じたりするため、これらの症状を改善することが目的となります。子供のころからの斜視が出やすくなった場合の他にも、脳梗塞や脳腫瘍、神経麻痺、甲状腺眼症、重症筋無力症、強度近視に起こる内斜視、加齢による斜視(sagging eye syndrome)、視力低下による斜視(廃用性斜視)など様々な原因があります。頭部MRIや、採血などの精密検査を行い、原因に沿った治療をして症状を改善します。

斜視の種類

大人には、内斜視、外斜視、上斜視の他に、回旋斜視があります。
回旋斜視は、転倒や事故の後に頻発する後天性滑車神経麻痺で生じることが多く、右目で見る像と左目で見る像が斜めにクロスして見えます。障子の桟が斜めに見える、窓のサッシがクロスして見えるなどの症状を自覚します。眼鏡で改善することは難しいですが、手術で治すことが出来ます。

斜視の治療

保存的治療

眼鏡の治療: プリズムを眼鏡に組み込んだり、貼ったりして、斜視が出にくいようにします。
視機能訓練: 目を寄せるための訓練や、目を動かす訓練をして、斜視が出にくいようにします。

手術治療

目を動かす筋肉のバランスを整える手術をして、斜視を治します。
目の外側についている筋肉の場所を動かすことで、筋肉の働きを強めたり、弱めたりしてバランスを整えます。

弱視とは

担当医からのメッセージ

弱視は、何らかの原因によって視力が十分に発育していない状態のことです。原因には、遠視・乱視・不同視などの屈折異常や、先天白内障などの濁り、斜視などがあります。視力の発達は8歳ごろで終わってしまうので、早期発見し、原因疾患を見つけて治療すれば、ほとんど治すことが出来ます。発見が遅れると治せませんので、検診で指摘されたら必ず受診して適切な治療を行うことが大切です。

概要

視力が正常に発達するためには、常に網膜にピントが合った像が映ることが必要です。生まれた直後から乳児期にかけて網膜に映る像がぼけるような病気があると、視力は発達することができなくなってしまいます。
一般的に視力は、新生児で0.02~0.05程度、生後6ヵ月で0.1~0.2程度、1歳で0.1~0.4程度、3歳で0.8~1.0に達すると考えられています。弱視は、視力の発育を妨げる原因を発見して、治療することで治せる病気です。手遅れにならないよう、早期に発見して治療を行うことが重要です。

弱視の原因と治療

屈折異常弱視

遠視、近視、乱視の度数が強いため、網膜にピントが合わない状態です。また、左右の目の屈折度数に違いがあることを不同視といい、度数が強い方の目は弱視になります。
調節麻痺薬を点眼して屈折の検査をおこない、正確な屈折度数を測定します。そうして得られた適切な度数の眼鏡をかけて、網膜にピントを合わせます。弱視眼の視力をあげるためには、よく使い刺激させることが重要です。よって、弱視でない方の目を隠して過ごす治療を行います。
この場合、お風呂と寝るとき以外は、眼鏡を常に装用しておくことが大切になります。

形態遮断弱視

先天白内障や先天眼瞼下垂などにより、網膜にきれいな像が届くのを遮られると弱視になります。早期に手術で原因を取り除きます。

斜視弱視

視線がずれている方の目は、ものを見る一番大事な黄斑部で見ていないため、視力が発達しません。
プリズム眼鏡や手術で視線を整えて、弱視でない方の目を隠して過ごす時間を作ることで、弱視眼の視力の発達を促します。

遠視・近視・乱視とは: 日本眼科学会ホームページを参照
※リンク先:https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=28