眼形成・眼瞼外来

担当医からのメッセージ

当院では、垣淵正男先生(兵庫医科大 形成外科教授)のご指導のもと、1か月に1~2回の頻度で、眼瞼・眼形成外来を行っています。

これまでに眼瞼下垂症、眼瞼皮膚弛緩症、眼瞼内反症、顔面神経麻痺、鼻涙管閉塞症、甲状腺眼症、眼窩底骨折などに対して外科的治療を行っています。

具体的には、眼瞼下垂症に対しては挙筋前転法、ミュラー筋短縮術、前頭筋吊り上げ法を、眼瞼内反症に対しては眼輪筋短縮術、Jones変法,ホッツ変法を、顔面神経麻痺に対しては、眉毛挙上術、眼瞼外反矯正術、口角挙上術を、鼻涙管閉塞症に対しては涙嚢鼻腔吻合術、結膜鼻腔吻合術を、甲状腺眼症に対しては眼窩減圧術、眼窩底骨折に対しては骨・軟骨移植による整復術を行っており、全身麻酔による対応も可能です。

お気軽にご相談ください。

眼瞼

眼瞼眼瞼は、眼球を覆い眼球の保護や眼球の乾燥を防ぐ役割をになっています。

眼瞼下垂

概要

眼瞼下垂上まぶたがさがって視界を邪魔します。まぶたを引っ張り上げる組織がゆるんでまぶたが下がる場合とまぶたの皮膚がたるんで皮膚があまる場合、両方を起こしている場合があります。
また、神経の障害などが原因でまぶたが下がることもあります。

症状

みづらさなど

治療

手術でまぶたをひっぱり上げたり、あまっている皮膚を切除したりします。

方法
  1. まぶたの周囲を消毒します。
  2. 上まぶたに局所麻酔薬の注射を行います。
  3. 上まぶたの皮膚を切開します。
  4. ゆるんでいる挙筋腱膜と瞼板を露出します。
  5. 挙筋腱膜を瞼板に縫合します。
  6. 上まぶたの皮膚を縫合閉鎖します。
合併症
  • まぶたの周囲の一時的な腫れや内出血。これは通常数日から数週間で解消されます。
  • まぶたが過剰に持ち挙がる(過矯正)または十分に持ち挙がらない(不十分な矯正)場合があります。
  • まぶたの形状が変化することがあります。時にはまぶたの位置が理想的ではなくなることがあるため、再手術が必要な場合もあります。
  • 手術後にまばたきが異常になったり、まぶたの動きが制限されたりすることがあります。
  • 一時的な視力の変化が起こることがありますが、通常は一時的なもので、数日から数週間で改善されることが多いです。
  • 術後に切開部位で感染が起こる可能性があります。手術後の適切な傷口ケアや医師の指示に従うことで、感染のリスクを最小限に抑えることができます。

眼瞼内反症&睫毛乱生

概要

眼瞼内反症&睫毛乱生眼瞼内反は、まぶたの縁が内側(眼球側)を向いているせいでまつ毛が眼球に触れる状態です。睫毛乱生は、まつ毛の一部が内側(眼球側)に向かって生えているせいでまつ毛が眼球に触れる状態です。

症状

充血や異物感など

治療

手術によってまぶたを外側に向けます。

手術の方法
  1. まぶたの周囲を消毒します。
  2. 下まぶたに局所麻酔薬の注射を行います。
  3. 下まぶたの皮膚を切開し、眼輪筋、瞼板を露出します。
  4. 眼輪筋を横方向に縫合短縮し、場合によっては下牽引腱膜を瞼板の下端に縫合します。
  5. 下まぶたの皮膚を縫合閉鎖します。
合併症
  • 目の周囲の一時的な腫れや内出血。これは通常数日から数週間で解消されます。
  • 矯正が強すぎると、下まぶたが眼球から浮いてしまい過矯正(外反)が起こります。逆に矯正が弱すぎると再発の可能性があります。
  • 術後に切開部位で感染が起こる可能性があります。手術後の適切な傷口ケアや医師の指示に従うことで、感染のリスクを最小限に抑えることができます。

兎眼

概要

目を閉じようとしても完全に閉じることができません。神経麻痺や外傷などで起こります。ひどい時には黒目(角膜)に感染症をおこしたり孔(あな)があいたりします。

症状

目の乾燥感や異物感、充血など

治療

点眼薬や軟膏により表面を保護します。手術治療では目が閉じられるように、まぶたの形を変えます。

眼瞼腫瘍

概要

まぶたに発生するできものです。多くの場合、ものもらい(霰粒腫)、ほくろ、いぼなどの良性のものですが、悪性の腫瘍もできることがあります。

症状

異物感など

治療

局所麻酔で切除を行います。

霰粒腫

まぶたの縁にある脂腺(油分を出す腺)がつまって油分がたまり、痛みをともなわないしこりができた状態です。細菌感染がおこると、痛みをともなうようになります(化膿性霰粒腫)。

症状

異物感やまぶたの腫れなど

治療

点眼薬・軟膏や内服薬の投与(この場合は数ヶ月単位の治療を要します)、ステロイドの局所注、切開による除去などです。

眼瞼けいれん

概要

両目のまわりの筋肉が意思とは関係なく持続的に収縮する病気です。ひどくなると目があけられなくなることがあります(開瞼失行)。

症状

程度により症状はさまざまですが、乾燥感などのドライアイに似た症状からまぶしい、見づらい、目があけづらい、痛いなどの症状をきたします。

治療

A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)を目の周囲に注射して原因となる筋肉の働きを一時的に弱めます。

眼瞼炎

細菌やウイルスの感染、点眼薬によるかぶれなどが原因でおこります。

症状

まぶたの赤みや腫れなど

治療

眼軟膏の塗布などを行います。

マイボーム腺機能不全

マイボーム腺はまぶたの縁にあり、目の表面に油分を分泌して涙の安定性を高めます。マイボーム腺機能不全では油分が増えたり、マイボーム腺がめづまりを起こしたりします。まぶたの炎症を起こすこともあります。目の乾燥や炎症が起こることがあります。

症状

目の不快感や異物感など

治療

まぶたの縁を濡らした綿棒で拭いたり、まぶたを温めたりすることで症状の改善が期待できます。また、ピンセットのような器具を使用してつまった油分を押し出したり、光線療法の一種であるIPL(intense pulsed light)をまぶたにあてたりします。IPLは保険適用外です。

涙器・涙道

涙は、目の表面を覆うことで、目の乾燥を防ぎ、酸素や栄養を供給し、細菌などの感染を防ぎ、目の表面の傷を治すなど、目の健康に重要な役割を果たしています。
涙は涙腺で産生され、上下涙点から上下涙小管を経て総涙小管に入り、涙嚢にたまり、鼻涙管を通って鼻腔に排出されます。この経路を涙道とよびます。涙嚢や鼻涙管粘膜には涙の流れをスムーズにし、感染防御の役割をはたすムチンを分泌する細胞があります。この経路に異常が生じる様々な目の病気があります。

 

涙器・涙道
涙器・涙道

涙嚢炎

概要

鼻涙管閉塞によって、涙が通過しにくくなり、涙嚢内に涙が溜まり、細菌が増殖することによって起こる病気です。
鼻涙管閉塞の原因には、外傷、口腔外科手術、Wegenger肉芽腫、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデスなどがあります。閉塞によって涙嚢と鼻涙管閉塞部の近くに老廃物や粘液が溜まり、細菌の異常増殖が起こります。
涙囊炎には慢性涙囊炎と急性涙囊炎があります。慢性涙嚢炎では抗菌作用を持つムチンが減少し、化膿がひどくなると、膿が結膜嚢に逆流し結膜炎や角膜潰瘍をおこすこともあります。慢性涙嚢炎は40歳以上の女性に多いことが知られており、涙液の分泌低下や化粧品などの使用が原因の一つと考えられています。
急性涙嚢炎は、慢性涙嚢炎をおこしている時に急激に炎症がひどくなり、涙嚢からまわり組織に急性の化膿性炎症がおこった状態を言います。涙嚢炎の合併症としては、眼窩蜂巣炎、涙瘻の形成、髄膜炎、脳膿瘍形成、海綿静脈洞血栓症、重度の副鼻腔炎などがあります。
涙嚢炎の主な症状は、涙があふれる流涙と眼脂です。涙嚢まわりが腫れていることもあります。急性涙嚢炎では、流涙、眼脂の他に、涙嚢周囲が赤く腫れ、痛みがでてきます。

検査

涙道の閉塞が疑われる時には以下の検査をします。

涙管通水検査

涙点から鼻腔まで、涙道に生理食塩水を注入し、食塩水が鼻腔に達するかどうかを確認します。
正常な場合、食塩水は鼻から喉に流れますが、涙管閉塞の場合は逆流します。
細菌感染による涙嚢炎がある場合は、膿が逆流することもあります。

涙道内視鏡検査

涙道内視鏡検査は、流涙の原因を調べるために行われる検査です。具体的には、目頭の涙点から細い内視鏡を挿入し、下鼻道の涙の出口までカメラで観察します。もし閉塞部位が見つかれば、内視鏡下で破り、チューブを留置することで涙の流れを改善します。

治療

薬物治療

抗菌薬の点眼、内服、点滴などを行います。

外科治療

鼻涙管閉塞の外科治療としては、鼻涙管チューブの挿入術や涙嚢鼻腔吻合術が行われます。

  • 涙道ブジー
    細い針金のようなものを鼻涙管に通して涙道をふさいでいる膜を破り、鼻涙管を開通させる手術です。先の曲がった涙洗針をつけた注射器に生理食塩水を入れ、それを涙点から涙道内に注ぎ、生理食塩水が鼻腔に正しく排出されるかどうかを調べます。もし生理食塩水が上手く流れず、どこかが詰まっていると考えられる場合は、涙管に細い針金(ブジー)を通して閉塞部分を調べ、涙道を開通させる処置を行います。
  • 鼻涙管チューブ挿入術
    涙道内視鏡下で閉塞している部位を開放し、シリコン製のチューブを入れて、涙がチューブを通じて鼻腔に流れるようにします。シリコンチューブは数ヶ月で抜去する予定でいます。低侵襲で日帰りでも行えますが、チューブを抜いた後に再度閉塞する可能性があります。
  • 涙嚢鼻腔吻合術
    涙嚢鼻腔吻合術涙管と鼻腔の間にバイバス(⇒)を作り新たな涙道を形成する手術です。鼻涙管チューブ挿入術後の涙囊炎再発例や鼻涙管チューブの閉塞例などが適応となります。
    皮膚を2cmほど切開し、涙嚢と鼻腔の間にある骨を削り取り、穴をあけます。
    次に、シリコンチューブを穴に留置し、鼻出血を止めるためガーゼを鼻腔内につめます。手術時間は約1時間で1週間ほど入院します。皮膚の抜糸は約1週間後でシリコンチューブは約3ヶ月後に抜去しますが、それまでは約1~2週間ごとに通水検査を行います。
    術後合併症として、稀に鼻出血が長期間続く場合があります。初期にはガーゼをつめることにより止血を試みますが、経過によっては耳鼻科を受診していただきます。また、皮膚切開部に傷跡が残ったり、骨を削った部位の皮膚が陥凹することもあります。新たな通路が閉塞することがあります。

涙嚢腫瘍

涙嚢には上皮が存在し、その上皮下にリンパ腺があります。このため、リンパ系の腫瘍が涙嚢から生じることがあります。涙嚢部に膨らみが生じた場合、ほとんどは涙嚢炎であることが多いですが、まれなケースでは涙嚢にも腫瘍が発生し、腫瘍の存在によって涙道閉塞を引き起こして慢性的な涙道の炎症を引き起こすこともあります。涙嚢腫瘍の症状は、腫瘍の種類や大きさによって異なります。代表的な症状には、眼球が押されて眼が飛び出る「眼球突出」や、眼の位置のずれ、眼の動きの障害による「複視」があります。涙嚢腫瘍は眼窩腫瘍の中でも比較的表面に近い部位に存在するため、直接しこりに触れることがあります。
涙嚢腫瘍の診断には、画像検査であるCTやMRIが必要です。治療は腫瘍の種類に応じて行われ、生検や手術療法、化学療法、放射線療法などが選択されます。

涙小管炎

概要

涙小管は涙の排出経路で、涙を目から鼻に運ぶ役割を果たしています。
涙小管炎の最も一般的な原因は、細菌感染です。また、ドライアイ治療として涙点に挿入された涙点プラグが涙点から涙小管へ移動することによっても涙小管炎が引き起こされることがあります。
主な症状と徴候には、流涙、眼脂、充血(特に鼻側)があり、炎症のある部位を押すと痛みが生じることがあります。

治療

  • 温罨法
    涙小管を温めて炎症を和らげる方法です。
  • 薬物治療
    感染が原因の場合は適切な抗菌薬を使用します。
  • 涙小管切開術
    涙小管切開術は、涙小管の閉塞部分を切開して開通させる手術です。涙小管の内部を視覚的に確認しながら行われます。
  • 涙小管搔爬
    涙小管搔爬は、涙小管内に異物や結石がある場合に行われます。涙小管内の障害物を取り除くために細い針金(ブジー)を通して行います。

涙点閉塞症

涙点閉塞症は、涙の排出がうまくいかない病気で、目がうるむ感じや涙があふれ出る症状(流涙症)が出ることがあります。原因としては、加齢に伴い涙道内に老廃物が蓄積してきて次第に塞がってくることが多いようです。
症状としては、涙が吸収されずにあふれ出るため、常に涙っぽい感じや、泣いてもいないのに涙があふれてくることがあります。また、涙が停滞することにより目やにが増えることもあります。
診断には涙道通水試験が一般的に使用されます。流涙症がある場合は涙道閉塞症が疑われますが、逆さまつ毛やドライアイ、結膜弛緩症などもなみだ目の原因となることがあります。
治療は基本的に閉塞部位を開通させてシリコンチューブなどを留置する治療が行われます。涙点が閉塞している場合には涙点切開を行います。