講演会・院内勉強会
最近の霧島眼科研鑽会の模様
第11回UAC霧島眼科研鑽会2019年11月9日
「最近の眼内レンズと術後合併症」
永田 万由美先生
永田先生には「最近の眼内レンズと術後合併症」というテーマでご講演をしていただきました。術後合併症として主に前嚢収縮と後発白内障が術後視力に大きな影響をあたえます。前嚢収縮は、コントラスト感度の低下を認めますが、視力の影響が少ない場合が多いです。そのため術後診察の際に散瞳をして、早期発見をする必要があることをご教授いただきました。後発白内障の発症を防ぐために、どのようにレンズを表面加工しているか、レンズと後嚢の接着を工夫して水晶体上皮細胞の増殖を防いでいるかなどをご教授いただきました。 各疾患が発症する機序、対処法、診療時の注意点などを示していただき、非常に勉強になりました。
「親水性眼内レンズの混濁、賢者は歴史に学ぶ」
小早川 信一郎先生
日本医科大学武蔵小杉病院の小早川信一郎先生をお招きし、親水性眼内レンズ(IOL)についてのご講演をしていただきました。内容は、親水性IOLの術後混濁やカルシウム沈着が視機能の低下を引き起こしてきた歴史や親水性IOLの現状に始まり、術後眼内炎を抑制するために抗菌薬を徐放するコンタクトレンズを実験的に作成したこと、人工虹彩についてなど、多岐に渡りました。小早川先生の今までの多大なる業績を、ほんの一部ですが、垣間見られた貴重な時間でした。
「疎水性アクリル眼内レンズ混濁の評価」
松島 博之先生
今回、獨協医科大学病院の松島博之先生に、疎水性アクリル眼内レンズ混濁の評価に関してご講演いただきました。普段の診察で気になっていた疎水性眼内レンズの混濁の分類や、その発症メカニズムから始まり、その混濁の程度の評価方法や、視機能どれくらい影響しているかなど様々な切り口からみた内容でした。非常にミクロな視点からの解説は、文献で調べてもなかなか詳細な記述が少ない内容でもあり、疎水性アクリル眼内レンズの性質に関して体系的に学べた貴重な機会でした。
講演会・院内勉強会(過去分)
過去に行われた霧島眼科研鑽会の模様
UAC霧島眼科研鑽会
第10回UAC霧島眼科研鑽会平成29年12月16日
糖尿病合併白内障手術のコツ
東京女子医科大学東医療センター眼科学教室 須藤 史子先生
須藤先生には「糖尿病合併白内障手術のコツ」というテーマでご講演いただきました。まずは糖尿病合併白内障手術の現況を、その後に糖尿病合併症例のコツとして、周術期の血糖コントロール、レーザーと手術の治療順序、術前滅菌化と術後黄斑浮腫予防という3つのテーマについてお話しいただきました。
ご年配の患者様が多く来院される当院において、糖尿病と手術は切り離せないものであり、どのテーマも大変興味深いものでした。明日からの診療に役立たせていただきます。
点眼薬の早期眼内移行経路
さいたま日赤病院 石井 清先生
さいたま日赤病院の石井清先生により「点眼薬の早期眼内移行経路」というテーマでご講演いただきました。
点眼薬の眼内移行ルートは従来、角膜→前房→硝子体→視神経の順と考えられていましたが、結膜円蓋部→眼球外側→眼球後部→短後毛様動脈のルートで視神経に薬物が伝達することをサルを用いた実験で証明した経緯について説明していただきました。
基礎的な内容以外にも「手術後点眼支援・世紀末点眼医療事情」というテーマで介護保険制度に関する説明もありました。術後点眼薬を一人で行えない独居の高齢者が抱えている問題を改めて考える良い機会となりました。
理論と手技で乗り切る、破嚢・合併症処理
大内眼科 大内 雅之先生
大内眼科の大内雅之先生により「理論と手技で乗り切る、破嚢・合併症処理」というテーマでご講演いただきました。
白内障術中の合併症のひとつに破嚢があり、その処理方法は非常に大切です。分かりやすいイラストと美しい手術動画を用いて、破嚢した際の核のビスコエクストラクション、破嚢の拡大を防ぐ方法、硝子体処理、粘弾性物質の種類や使い方、IOLの挿入方法などについて、お話しいただきました。
手術機械の発達により、術中合併症は減少し、実際に経験できる症例は限られており、とても役立つご講演でした。
実験的評価を基礎とした低侵襲白内障手術
日本医科大学武蔵小杉病院 鈴木 久晴先生
白内障手術をいかに低侵襲にするかというテーマで、鈴木先生がこれまで行われた実験結果を踏まえてお話しいただきました。
白内障術後の早期評価として角膜体積やvolume stress indexなどの有効性をお示しいただきました。
また、術中の眼圧や内皮の温度も機械の設定や粘弾性物質の種類によって差があることも、slit side viewという新しい評価法なども用いながら説明していただきました。
さらに、HYUIPテクニックという新しい創口閉鎖の手法に関しても実際にOCTで評価をして有用性を確認されており、常に臨床的な改善点を見つけようとする姿勢に感銘を受けました。
IOL度数計算式のアップデート
宮田眼科病院 森 洋斉先生
平成29年12月16日、当院の森洋斉が「IOL度数計算のアップデート」と題し、長・短眼軸長眼やLASIKなどの角膜屈折矯正手術後眼に対する計算法について講演しました。
長・短眼軸長眼ではSRK/T式を用いると屈折誤差が大きくなってしまいますが、Barrett Iniversal Ⅱ式やOlsen式などの新しい世代の計算式を用いることで屈折誤差を軽減できること、LASIK後眼に対しては、以前と比べると予測精度が高い計算法が開発されていることなどについて、当院のデータや文献をもとに解説しました。
また、術中波面収差解析によるIOL度数計算法として、ORA(Optiwave Refractive Analysis)TMシステムについて紹介しました。
第9回UAC霧島眼科研鑽会平成29年7月29日
フックス角膜内皮変性症について
東京大学医学部眼科学教室 宮井 尊史先生
東京大学の宮井先生には、フックス角膜内皮変性症の最新トピックについてご講演いただきました。
日本で行われる角膜移植は年間1,500件程度ですが、アメリカでは年間40,000件が行われています。フックス角膜内皮変性症は、世界の角膜移植の原疾患の約4割を占める重要な病態です。フックス角膜内皮変性症は緩徐に進行する変性疾患であり、早期には無症候ですが中期から眩しさが出現し、晩期には不可逆的な、角膜内皮障害による浮腫のために痛みや視力低下が生じます。本疾患ではミトコンドリアの異常が関連しており、マイトファジーが亢進していることが示唆されています。今後は、ゲノムシークエンスに基づいた診断や新規の治療ができるようになる可能性があります。
臨床的な必要性に端を発し、基礎医学的なデータを踏まえてこれからの展望まで見据えた、総合的なご講演でした。
抗VEGF薬は大事、でもそれだけじゃない黄斑疾患の診断と治療
東京大学医学部眼科学教室 小畑 亮先生
小畑先生には、抗VEGF薬が治療の主流となっている加齢黄斑変性などの黄斑疾患を診療するうえで注意すべき点を中心にお話ししていただきました。
加齢黄斑変性と類似した所見を呈するものの抗VEGF薬が無効である後天性卵黄上病巣、萎縮型加齢黄斑変性の危険因子として注目されているreticular pseudodrusenなど、患者さんの状態に合わせて治療方針を決める必要性が強調されました。
また、近年OCT angiographyによって脈絡膜新生血管が非侵襲的に検出できるようになりました。一方で、視機能に悪影響を及ぼしていない脈絡膜新生血管に関しても検出されるようになってきました。
近年pachychoroid spectrum diseasesという新しい概念が提唱され、中心性漿液性網脈絡膜症やポリープ状脈絡膜新生血管症などが結び付けて考えられるようになっています。このような新しい機械や疾患概念などを含めて総合的に黄斑疾患を診療していく必要性が認識できるご講演でした。
ROCK阻害薬とこれからの緑内障治療
東京大学医学部眼科学教室 本庄 恵先生
東京大学の本庄先生により「ROCK阻害薬とこれからの緑内障治療」というテーマでのご講演をしていただきました。
内容としては、高齢化社会と緑内障の関係、加齢と隅角機能や房水流出路の関係、そして房水流出路とROCK阻害薬の関係などにつきまして、臨床・基礎の結果を交え非常に分かりやすくご教授いただきました。高齢の緑内障患者が増加傾向にある中、どのテーマに関しても今後の緑内障診療において非常に重要なものであり、緑内障へのさらなる理解を深めることが出来ました。
第8回UAC霧島眼科研鑽会平成28年7月9日
運転、交通事故と緑内障
慶応義塾大学医学部眼科学教室 専任講師 結城 賢弥先生
慶応義塾大学の結城賢弥先生より『運転、交通事故と緑内障』についてご講演いただきました。
緑内障は視野が欠損する病気ですが、この視野欠損の日常における不便性が当事者以外には伝わりにくく、『思ったより困ってない人』や、反対に『思ったより困っている人』を診察することがよくあります。結城先生はこの緑内障の視野欠損を車の運転と絡めて評価しておられ、これをご教授いただきました。これは日常生活に即した評価方法であると感心させられた上、とても参考になり日常診療がよりよいものになると確信しました。そのほか、緑内障を多角的に評価されており、緑内障へのさらなる理解を深めることが出来ました。
白内障・屈折矯正手術と老視 ~最近の話題から~
慶応義塾大学医学部眼科学教室 根岸 一乃准教授
慶應義塾大学の根岸一乃先生により「白内障・屈折矯正手術と老視 ~最近の話題から」というテーマで、前眼部領域の屈折矯正の問題についてご講演いただきました。
白内障に関しては、当院でも使用しているトーリック眼内レンズや多焦点眼内レンズといったプレミアム眼内レンズについての話をはじめ、瞳孔径と視機能の関連、術後屈折誤差への対応などについて動画を交えて説明していただきました。老視に関してはLASIK後の老視の特性や、年齢に伴う実用視力の低下についてお話しいただきました。どのテーマにつきましても、高齢者が多く受診し、白内障手術、屈折矯正手術を多く施行している当院にとって非常に重要なものでした。今後の診療の参考とさせていただきます。
霧島眼科研鑽会
第29回霧島眼科研鑽会2018年3月3日
「外眼部疾患治療のエッセンス」
江口眼科病院 院長 江口秀一郎先生
江口眼科病院の江口秀一郎先生より「外眼部疾患治療のエッセンス」というテーマでご講演いただきました。
外眼部疾患のなかから、霰粒腫・眼瞼下垂・下眼瞼内反についてご説明していただきました。それぞれの解剖学的な成因や病理組織などの基礎的なことをスタッフにも分かりやすくお話ししていただきました。また、注意すべき鑑別疾患や、手術方法について画像や動画を示していただき非常に勉強になりました。
薬剤耐性(AMR:antimicrobial resistance)について
大阪大学大学院医学系研究科 招聘教授 浅利 誠志先生
浅利先生には「眼科AMR対策&眼科実践感染管理」というテーマでご講演をしていただきました。
薬剤耐性菌が将来の医療に与える影響、耐性菌が出現するメカニズムや伝播経路、院内での感染予防対策やICT活動の重要性について分かりやすいスライドで説明していただきました。トリアージの必要な感染症は、必要に応じて接触予防策をとることが重要になることも話していただきました。どのテーマも興味深く、日常診療に必要なエッセンスが詰まったご講演でした。明日からの診療に役立たせていただきます。
第28回霧島眼科研鑽会2017年2月25日
緑内障クリニカルクエスチョン
広島大学大学院視覚病態学 木内 良明教授
広島大学大学院の木内良明先生により「緑内障クリニカルクエスチョン」というテーマでご講演いただきました。内容としては、最近話題となっているPre-perimetric glaucoma(PPG)の経過と治療適応、眼圧の低い症例に対する緑内障手術の成績、緑内障点眼薬の第一選択および第二選択、緑内障点眼薬における角膜上皮障害の原因・対応と、どのテーマに関しましても、外来で緑内障患者様を診療する上で問題となることが多いものでした。今後の緑内障診療の参考とさせていただきます。
緑内障手術のタイミング
北里大学医学部眼科 庄司 信行主任教授
北里大学の庄司信行教授には、「緑内障手術のタイミング」についてご講演いただきました。高齢化が進行している中で、緑内障点眼の管理が難しい患者様も増えており、早期からの安全な手術が求められています。
近年、Minimally invasive glaucoma surgery(MIGS)と呼ばれる低侵襲な手術が可能になっています。Selective laser trabeculoplasty(SLT)は低侵襲ですが十分な効果が得られない場合もあり、またトラベクトーム手術は重篤な合併症を起こしにくく、結膜が温存されトラベクレクトミーへの影響が少ないのが特長です。
幾つかの新しい緑内障手術のデバイスが開発されていますが、留置器具の安全性や安定性の十分な検討が今後の課題と考えられました。また、濾過手術の重篤な合併症である濾過胞感染は、早期受診による早期発見が重要であると強調されました。
院内勉強会2018年12月8日
ORA(TM) System with VerifEye+(TM) Technologyの使用経験について
中京眼科 市川 一夫先生
中京眼科の市川一夫先生にORA(TM) System with VerifEye+(TM) Technologyの使用経験についてお話ししていただきました。
まずは機器の適切な使用方法をお話ししていただきました。適切な眼圧や角膜、眼内レンズの状況、患者様の頭や目の位置などを全て合わせる細やかな注意が必要であることをご教示いただきました。また、ORA(TM) System with VerifEye+(TM) Technologyを使用するだけではなく、CASIAも組み合わせた白内障術後度数までデータをお示していただきました。CASIA併用の有用性や現時点での眼内レンズの決め方の指標なども教えていただき、今後我々が使用して行く上でも参考になるご講演でした。