角膜移植
当院では、国内提供のみならず、海外提供角膜による角膜移植手術を行っております。海外提供の角膜の場合、移植希望の患者様を長くお待たせすることも無く、当院での移植希望登録の後、約2~3ヶ月以内に角膜移植手術が受けられます。
疾患に応じて、以下のように多様な手術術式を行っております。
全層角膜移植術
角膜全層を取り換える術式です。病変が角膜全層に及ぶ疾患も治療可能です。
角膜パーツ移植(角膜内皮移植術・深層層状角膜移植術)
疾患により障害されている部分だけを移植する術式で、合併症の少ない方法です。角膜内皮細胞が障害されている疾患に対しては角膜内皮移植術、角膜実質のみ障害されている疾患には深層層状角膜移植術を行っており、良好な成績が得られています。
羊膜移植術
角膜穿孔など緊急を要する疾患に対して、保存羊膜による移植手術を行っております。また、再発翼状片、アルカリ外傷など重篤な疾患に対して、角膜輪部移植を併用した前眼部再建手術も行っております。
人工角膜移植
当院では年間約35眼の角膜移植手術を行っていますが、症例によっては角膜移植片不全が起こり再度角膜移植を必要とする場合があります。しかし複数回の移植片不全の既往がある症例では、通常の角膜移植での治療は良好な結果が期待できないことも多くあります。
このような患者様に対し、当院では2008年より人工角膜、BOSTON KERATOPROSTHESIS (Boston Kpro) typeⅠの移植を始めています。この人工角膜、Boston KproはMassachusetts Eye and Ear Infirmary(MEEI:マサチューセッツ眼・耳病院)で1990年に開発されました。素材はPMMA(ポリメチル・メタクリレート)で、人移植角膜片に装着して患者眼に移植されます(図1)。全世界では10,000例以上の実績があり、適切な術後ケアを行えば、術後早期に良好な視力の回復と長期に渡る安定性が期待できます。
当院ではこれまでに2008年から10例のBoston Kproの移植を行いました。術後、長期においても良好な視機能が得られております。従来の方法では救い得なかった症例に対しても、より新しい手術・手技を導入し患者様に笑顔が戻るよう積極的に取り組んでいくよう努めています。
角膜クロスリンキング
Cross-Linking
Cross-linking(架橋結合)とは、ポリマー同士を連結し、物理的、化学的に性質を変化させる反応です。ヒトに応用した角膜クロスリンキングは、リボフラビン(ビタミンB2)を角膜内に浸透させ、特殊な紫外線(365nm)を眼に照射することで角膜内のコラーゲンが架橋形成を起こし、角膜実質の強度を向上させる治療です。角膜クロスリンキングにより、円錐角膜や近視矯正手術後の角膜拡張症などの進行を抑えることが可能となりました。